『素描163』 地図になく宛もなく手に触れた。春の泪、羽を伸ばせども触れず。季節の訪れ、繊細な心ひた隠し、相容れず、舳先、灯台。浅瀬の波に揺れる子供たち。綿毛が空に飛んだ映画を思い出して流れていく姿。
『素描161』 砂漠と河に大きな鴨鹿の足跡。地中海ちかくの避暑地を巡り日に焼けた男が一人。彼が残した小道を訓戒として偽物までもが走りだす。広大な世界を知りたいと願った時、短縮法で書かれた平面図が奥行きを凌駕する。
『素描155』 回転の作用が晴れ間を維持し無分別の改善の上を鳶が飛ぶ。春と夏の間、甘いチーズケーキに風が吹く。架空を掻き鳴らす。広がった時間。写真にうつる不整合の炎が照らす歌人の舌の木の葉。
『素描154』 放り投下駄。ひ、の、ひ、の。 ひ、ろ、う、の。刺、の、中、木。