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規定的なハンコ

『規定的なハンコ』

ひどく思い悩む青年に「判断されるためにここに並んでいるんだよ」と大人の女性は言う。「真っ赤に染まったインクのような顔をして、面倒くさいわよ」と続ける。青年には印はまだ与えられていない。彼は順番を待っているうちに我慢ならず、”感情を確定させるハンコ”を盗み出して、何者であるかを規定しようとする。

体中にハンコを押して印をつける。何度も繰り返すうちに、その印はすぐに薄くなり、依存した中毒者のように、また別のハンコを探し始める。順番をきちんと待つ女性は、月に一度薬をもらいに病院にいくように、印付けを日常に落とし込み生活をする。

「規定されない勇気はないの?防御にしては、意外と脆いわよ」と女性。
「ハンコの存在を知らなければよかった」と青年は話をそらす。

虚勢の類と何ら変わらないことを青年自身も知っている。”その目の逸らし方は、いつも同じで工夫がない”と彼自身も気がついているが、習慣を矯正することはたやすくない。しかし、青年も女性も同じ穴のムジナであり、人生に捕らえられた人間、君とあなたのような関係なのである。