『ゆらめき』
信号を待っていると、空から本が降ってきた。それは音も立てずに地面に落ちた。男は目線に下をやると本は右にずれた。
-風もない広々とした交差点-
男は本を拾って適当にページをめくった。
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彩られた閃きに、シビアなる、見開きの本。タイムマシンの誤動作による移動、記憶の境目、恣意的な、ハンマーシャーク。
川を流れていく表皮、失念の快楽。cos.調印式に出席できない皮肉のアンドロメダ。
雛!雛!雛!
文化と不倫した、首を長くして待った、ゆらめく火、ユタラプトルの足跡。
竹!竹!竹!
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男はそれをみて、くずれた詩とメモの痕跡の差異について考えてみた。気がつけば信号は赤から青に変わっていた。「差異などない!信号の黄色のように次を予測させるためだけに存在するものもあるのだ」と男は声を荒げた。艶かしい女が通り過ぎた。食べ物を頬張った時のような表情をしていた。それは女の平面的な顔とつり合っていた。しんとした交差点、車のヘッドライトだけが光っていた。