『素描36』
ダルマが転がった。どこまでも、どこまでも転がった。均等に降る雨に打たれても倒れなかった。
ダルマは笑った。いつまでも、いつまでも笑った。信号に来る羽目になっても悟らなかった。
ダルマは土に潜った。行く先々で火になり、水になり、木になり、金になった。
修行も積まずに、意気揚々と空を目指す。ひん剥けそうなほど、黒い目の玉を上に向けた。すると、ダルマの鋳型が生まれた。複製されたダルマはけだるそうにしている。
設計通りのダルマは転がった。どこまでも、どこまでも転がった。いくら方向を見失ってもダルマだった。