so sasatani,objective-Saw since 1990.02.02
『素描45』 冬の夕暮れ、商店街にある一軒の店の前にたたずむ。 -日が没してあたりは冷え込む- かじかんだ手をにぎりしめて、天まで届きそうなほど白い息を吐く。店に売られているトルコランプは色鮮やかで、僕たちを照らしている… 続きを読む
『素描44』 分厚い冬の雲。ひとしきり降った雨により濡れている。駅に傘を置き忘れてきた。 白い砂の音は遠ざかり、羊がひしめき合う。いくつの民族が嘲り笑い、愛憎を慮るのだろう。 無抵抗のトランジスタから発される声は大きく、… 続きを読む
『素描43』 霜が降りる仲冬に一人、静寂を踏みつける。鈍い影は忘れかかった思い出を補正する。蘇生されない、空からの贈り物。ひらひらと舞い、にじんでは消える。飛蚊症みたくまぶたの裏に光が浮かぶ。丸い黒点は動き、夜にピカッと… 続きを読む
『素描42』 くゆるくゆる 愛する人を考察。くゆるくゆる またたく間に考察。くゆるくゆる 新しい未来を考察。 あこがれの寓話に飲み込まれ ぐらりぐらり。美しい薔薇には棘があり ぐらりぐらり。 ひとり湖上で浮かぶ。まんまる… 続きを読む
『素描41』 小づちを持ってきて、やれ、追い出せ。それ、飛び出せ。 「金ぴかの銃を返してもらおうか!」「その日暮らしの私には厳しいのです。笑いの絶えない関係が欲しかっただけなんです」「知ったことではない!銃口がこちらに向… 続きを読む
『素描40』 真冬の海に数字と夕日が沈む歪む・棘のある栗を拾い、黒い枝が折れかかり、激しい雨が降る。きみどりに染められた労働の布石は、相変わらず。コンビニ飯の宇宙、在り処、もう二度と、もう二度と。深淵のコウモリはやがて君… 続きを読む
『素描39』 地中にめぐらされた根に、ほどなくとける氷に、罰を逃れるあなたに、左手を差し伸べ右の頬をつきだす。人と自然、文明の力学。ひび割れた内面性。キッチンのタイマーが鳴った。あらかじめ用意された人々はおどけだした。冬… 続きを読む
『素描38』 添い遂げられなかった。中継地点もなくて、希望だけを持ち歩いていた。根の深い問題も、傷だらけのレトリックも眠りとともに置いてきた。ヒューズのとんだあの地平線から逃れてみたけれど、反復的に詐欺は続いた。豪快に部… 続きを読む
『素描37』 所有した言語は沈黙した。てのひらを眺めてみても、頭を冷やしてみても、黙っていた。ピアノを調律する時のように耳を澄ましてみた。「て」「に」「を」「は」を見直してみた。手に取った屋根瓦を間近で見てみた。頭部を黒… 続きを読む
『素描36』 ダルマが転がった。どこまでも、どこまでも転がった。均等に降る雨に打たれても倒れなかった。 ダルマは笑った。いつまでも、いつまでも笑った。信号に来る羽目になっても悟らなかった。 ダルマは土に潜った。行く先々で… 続きを読む