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記憶をなくす少女

『記憶をなくす少女』

2時間で記憶をなくす少女は笑った。
蚊取り線香の煙の近くにいる蚊のように、長く続かないと本人は気がついていた。その声はか細く、可愛らしく、あどけない。男の子よりも身長が高くなった、思春期の、内と外のキャラクターを理解した健康的な彼女たちのように笑う。

失うから悲しいのだろうか、少女をみてもそう言えるのだろうか。輪郭をともなった歪なかたちを撃ち壊すことはできるのだろうか。他者への冒涜、良心の呵責。親しい間柄を修復しようと試みるあなたと遜色なく、さあ、土の墓に埋めてしまおう。決意の朝は寒く孤独で、楽しい。少女も愉快に笑ってくれるはずだ。

-僕は律せられる-

火を消すために消防車が出動し、サイレンが遠のく。心残りはただ、少女に対して2時間を与えられたかどうかなのだ。