『素描205』 傘、麻、似、傘、麻、似、時をかけると移さず名付けたのは兄と弟の灯。 傘、麻、似、傘、麻、似、有り難がる心に残ると名付けたのは沙羅。
『素描204』 雲を眺めたお互いの奏法が夜に沁みる。友と峰を超えども道のりはまだ続く。有り難がる心に連想される実のなる自由。紅色の牛の足どり、それもまた美しきかな。
『素描203』 閉じられた煙の管。巡り還元される守りを反復と呼べるのだろうか。何を語ろうとコードの網の目。沈黙の余白のみ、理にすでに触れていたはずなのに白樺、夢をもつ葵、もう、捨てよう。
『素描201』 554m 頭 春の夜風 451m 余地に夏 湯と宮 218m 秋の距離 繭についての本 52m 八人の輪 冬の琵琶
『素描200』 星はいつからか五等の線で結ばれ、渚は静まりかえった愛を数えた。岸壁の四つの動作には無駄がなく日々を紡ぐ。ぐるりと回る風車の羽根、前衛的な写真にあるピンボールが我々をはじく。
『素描198』 育まれた、報われた、椋鳥の涙。深夜、冬の高速道路。ある都市の救済院。選択に通底する余韻、いい夢はいい夢であるとは限らず、下層構造を支える自治区のような微笑み。赤く染まった頬もただあなたにある。
『素描197』 浮く憂鬱、薄い膜が目の前にあり天上に届かず。左手に宿した故郷、日が暮れて、暖かい、波に委ねて、気の向くまま猫のよう、いずれかの架け橋として。